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こんにちは。院長のしながわ内科・循環器クリニック院長の品川弥人です。

今回は糖尿病の運動療法についてお話しします。

糖尿病の治療は大きく分けると食事療法・運動療法・薬物治療の3つに分かれます。運動は糖尿病治療の一角を占めるとても大事なものなのです。
運動療法は以下のような効果があります。

  • 血糖や脂肪を燃焼させ、血糖値が下がる。
  • 長期の効果としてインスリン抵抗性が改善する。
  • 筋力を維持し、体力低下や骨粗鬆症の予防になる
  • 血圧や脂質異常の改善になる。
  • 認知症の予防になる
  • ストレスやうつ状態の改善になる

次に運動療法の種類ですが、
① 有酸素運動: 歩行やジョギング、水泳などの全身運動
②レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、スクワット、腕立て伏せなどの筋力をつける運動
の2種類に分けられます。
ちなみに水中歩行は有酸素運動とレジスタンス運動がミックスされた運動であり、膝への負担もかからないことから、肥満を合併した糖尿病患者さんや膝が痛くて歩くのが難しい方にはとても有効といわれています。
次にそれぞれの運動への取り組み方です。
①有酸素運動
・中強度(中くらいの強さの運動)を週に合計150分以上、週に3回以上
中強度とは、運動時の心拍数が50歳未満で100~120拍/分、50歳以降で100拍/分以内くらいと言われています。
・歩行であれば1回15-30分、1日2回、1日1万歩程度、週3回以上が理想です。
②レジスタンス運動
・週に2-3回(2日連続しないように)。数種目のレジスタンス運動を1種目につき、10~15回を1セットとして1~3セット繰り返すことが勧められています。

また、3つ目の運動として高齢者の糖尿病患者さんに推奨されるバランス運動というものがあります。
具体的には片足立ち、ステップ練習、体幹のバランス運動などです。これはサルコぺニア(筋力低下による体力の低下)予防に有効で、特に片足立ち運動がおすすめです。片足を5㎝くらい浮かして、片足で立つ運動を左右1分づづ、1日3回くらい行うと筋力低下防止になります。

さて、実際に運動をしましょうと言っても、時間が取れない、膝が痛い、腰が痛いなど、様々な理由で実践できないという方が多いのではないでしょうか?
大事なことは自分の日常生活や体力に合わせて、とにかくできることをやってみることです。
例えば毎日通勤をされている方であれば駅を一つ手前で降りて歩く、毎日買い物に出かける方であれば、少し遠めのお店まで歩いていくなど、強制的に歩かなければいけないルールを作る。エレベーターは使わずになるべく階段を使うなどもお勧めです。
 筋力に自信のない方であれば、椅子へ座る、立ち上がる動作繰り返す運動だけでも筋力維持に役立ちます。また、膝の痛い方であれば椅子に座って膝をゆっくり曲げ伸ばしする運動もなども良いでしょう。

とにかく自分にできる運動を小さなことでも良いので始めて見て、習慣になるまで継続することです。始めた運動で血糖値が下がった、筋力がついた、体調が良い、など少しでも良い効果が現れれば、そこからさらに新しい運動への意欲が湧いてくると思います。
是非、何か一つでも良いので習慣として毎日の生活に組み入れてみて下さい。

糖尿病の食事療法

こんにちは。院長の品川弥人です。

今回は糖尿病の食事療法について、ポイントを3つに分けて簡単に説明します。

1)食事の回数と時間について

食事は基本3食にわけて摂りましょう。1回食事を抜くと、次の食事で血糖値が上がりやすくなるからです。3回に分けることによって食後の血糖値が上がりにくくなります。食事量のバランスは、なるべく朝食を多めに摂り、昼食は平均的、夕食を少なくすると1日の摂取カロリーは同じでも体重が減りやすいと言われています 。また食事パターンが朝方になると食欲が抑えられ 脂肪燃焼量が増加し 、食事パターンが夜型になると 、脂肪代謝が悪くなり 肥満になりやすいことも報告されています。夕食はなるべく早い時間に軽めに食べるようにして、なるべく寝る前3時間は食べるのを控えましょう 。

2)カロリー制限と糖質制限について

糖尿病の食事療法はここれまで一人ひとりに適切なカロリーを設定し 、糖尿病の食事療法のための 食品交換表を使ってカロリー計算を行って、炭水化物、タンパク質、 脂質をバランスよく摂取するのが基本とされていました 。しかし最近は糖質制限を重視する考え方も 一般的になっています 。基本的にはどちらでもしっかり食事療法を実践できれば糖尿病の状態は良くなります 。糖質を全く摂らない糖質制限もありますが 。続けるのが難しい人が多く、 長期的な体への影響はまだ見解が定まっておりません 。 一般的にはゆるやかな糖質制限が行いやすい食事療法かもしれません。
糖質とは炭水化物のことです 。炭水化物は消化吸収されると体の中に糖分になります 。具体的には ご飯、パン、イモ類、穀類ですね 。また砂糖が含まれる甘いもの、ジュース、炭酸飲料などもを減らす、可能ならばやめる方が良いです 。具体的にはご飯やパンなどの主食を半分に減らす方法が良いでしょう。

3)食事内容について

まず、海藻類やキノコ類を多く食べましょう。これらの食物繊維は 血糖値を下げる効果があるからです 。次に野菜や肉魚を先に食べ、炭水化物を後から食べるようにしましょう。それによって血糖値が上がりにくくなります 。飲み物は水やお茶を中心にしましょう。清涼飲料水やスポーツドリンクには大量の糖分が含まれています 。牛乳も1日コップ1杯までが良いでしょう 。お酒は血糖のコントロールが良ければ少量はOKです。ビールなら350 ml1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度が目安で、週2~3回にできるとなお良いと思います。また、可能な限り高度に加工された食品よりも 自然食品を 選ぶようにしてください 。高度に加工された食品とは 糖分や脂肪、塩分を多く含む加工済みの食品のことです 。具体的には菓子パン、ピザ、ケーキ、クッキー、ドーナツ、チキンナゲット、アイスクリームなどです 。こうした食品を食べ過ぎていると糖尿病や肥満だけでなく高血圧、 脂質異常症、心臓病 、癌などさまざまな病気が起こることを示した研究が増えています 。

糖尿病の食事療法は長く続けられるものを無理なく行うことが大事なポイントです 。カロリー制限、糖質制限、どちらでも自分に合ったやり方を選べば良いと思います 。

まずは自分に出来ることから始めてみて 、主治医の先生と相談しながら少しずつ食生活を改善して行くのが良いでしょう。

こんにちは。院長の品川弥人です。

このブログを書いている今週末は台風が近づいて暗い空と雨続きの毎日ですね。気温の変化で風邪などひかないように気を付けてくださいね!

さて、今回は糖尿病になる理由、二つの糖尿病のタイプについて説明します。

まず血糖値についての説明からです。
食物から吸収された糖分は血液中にブドウ糖として存在します。これが血糖です。血糖はからだにとって大切なエネルギーであり、細胞が血液中から糖分を取り込んで利用するわけです。

このブドウ糖を血液から全身の体の細胞に取り込ませるホルモンが、膵臓からでてくるインスリンというホルモンなのです。

つまり、インスリンは血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませてエネルギーとして利用するために必要なホルモンで、インスリンが働いた結果として血糖値が下がることになります。

糖尿病というのは
① インスリンの分泌が悪い(膵臓から分泌されない)
② インスリンの効きが悪い(細胞での効き目が悪い)
という二つの理由で起こります。

ではその大元の原因ですが、1. 食べ過ぎ 2. 運動不足 3. 肥満 4. 遺伝
この4つが大きな原因です。まれにウイルス感染などがきっかけで急激に糖尿病が進行することもありますが、ほとんどが食べ過ぎ、運動不足、肥満によるものです。

次に糖尿病の2つのタイプについて説明します。
まずは2型糖尿病。
これはインスリン分泌不全とインスリン抵抗性による糖尿病で、食べ過ぎや運動不足に加えて遺伝的な要因も発症にかかわってきます。すい臓はインスリンを作り出しますが、2型糖尿病では、その量が十分ではないか、作られたインスリンが十分効かない糖尿病です。以前は「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれていました。2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、10人に9人以上はこのタイプです。薬は一般的にまず内服薬を使用しますが、内服で不十分な場合はインスリン注射が必要になります。
つぎに1型糖尿病。
これはインスリン欠乏による糖尿病です。すい臓がインスリンをほとんど、または全く作ることができません。糖尿病の患者さんのうち、1型糖尿病は10人に1人以下です。
若い方の糖尿病もは1型糖尿病が多いですが、年齢に関係なく発症が見られます。
以上、糖尿病の原因とタイプについて説明させていただきました。

ほとんどの糖尿病は適切な食事や運動習慣で予防できます。
美味しいものが多い秋ですが、食べ過ぎや運動習慣に気を付けて、適切な体重を保ち、糖尿病を予防するようにしましょう。

こんにちは。院長の品川弥人です。

1カ月ぶりに新しい動画を作成しました!

今回から数回にわたり糖尿病についての情報発信を行っていきます。

まず初回は糖尿病がどんな病気か?についてです。

糖尿病とは血液中の血糖値高くなる病気です。文字通り血糖値が高くなると、尿の中に糖分がでてくるから糖尿病というのです。では糖尿病になると何が悪いのでしょうか?どんな症状があるのでしょうか?

糖尿病は尿の中に糖分が出るから悪いのではないのです。血糖値が高いことによって血管や神経が障害を受けて、長年放置することで重大な病気(合併症)を引き起こしてしまうから怖いのです。

そして一番知っておかなければならないことは、糖尿病はよほど悪化しない限り自覚症状が全くないことなのです。健康診断などの採血で血糖値やHbA1Cという数値を調べないと状態がわからないのです。

血糖値がよほど高くなると、口渇・多飲・多尿・体重減少などがおこりますが、全く症状がない状態でも血糖値が高い状態を放置しておくと、血管や神経の障害、合併症は進行していきます。

合併症には三大合併症とわいれる、体の中の細い血管が障害を受けることで起こる糖尿病性神経症、糖尿病性網膜症、 糖尿病性腎症が代表的です。これらの合併症は糖尿病になってすぐ起こるのではなく、糖尿病が悪い状態で5~10年経過すると出現してきます。

また、比較的大きな血管、大血管合併症には脳血管障害、狭心症・心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などがあります。これらは糖尿病以外にも高血圧や脂質異常病、たばこなどの影響も強く受けますので、比較的糖尿病が初期の段階でも起こることがあります。

さらには様々な感染症を起こしやすくなったり、多くの合併症が重なることで足が壊疽を起こしてしまうこともあります。

糖尿病とはこのように症状がないうちに進行し、取り返しのつかない病気を引き起こすから怖いのです。そうならないためにも定期的に健診・採血を受けて、糖尿病の指摘があった場合には放置しないで、しっかり管理と治療をするようにしましょう。

こんにちは。院長の品川弥人です。先日は練馬区の心不全医療連携の会で講演をさせていただきました。地域医療の現状と問題点は、その地域の人口動態、病院やクリニックの数や規模によって異なります。大事なことは地域毎にでできることを自分たちが率先して行っていくことだと思います。他の地域の先生達とのディスカッションはとても有益でした。

こんにちは。院長の品川弥人です。9月の最初の連休、今年もクリニックチームで湘南国際リレーマラソンに参加してきました。

ことしは秋晴れの気持ち良い天気にめぐまれ、絶好のマラソン日和でした。

24時間、襷をつないで走り続けました。

普段一緒に仕事をするメンバーで一致団結して過ごす時間は最高です。

素晴らしい仲間達に感謝です!

こんにちは。院長の品川弥人です。

今回は高齢社会で増え続けている不整脈、心房細動についての動画を作成しました。内容は3つです。

① 心房細動とはどんな不整脈なのか?
② 放っておいたら何が怖いのか?
③ どんな治療があるか?

心房細動とは心臓の上のお部屋の心房が震えてしっかり動かなくなってしまう不整脈です。そうなると下のお部屋の心室が不規則に収縮するだけになってしまい、脈のリズムがバラバラになり、一般的には脈が速くなります。症状は胸がどきどきして、とても不快に感じることが多いのですが、中には症状がない人もいます。自分では何も感じないけども健康診断の心電図で異常を指摘された、或いは、いつも血圧を測っていて最近急に脈が速くなった、ということで来院する方も少なくありません。

心房細動を放っておいて怖いことは二つあります。
1)脳梗塞を起こしやすくなること 
2)心不全を起こしやすくなること です。

なぜ脳梗塞を起こしやすくなるのでしょうか?それは心房がしっかり動かなくなることで血液がよどんで、心房内に血栓=血の塊が心房の中にできてしまうからです。この血栓が心臓にとどまっているうちは何もおきませんが、これが流れて脳の血管に詰まることで脳梗塞を起こすのです。
心房細動が原因で脳梗塞を起こすと、とても重症になることが多く、直接命にかかわる、もしくは大きな麻痺が残ったりする可能性が高いのです。また、心房細動になると、心臓が血液を送り出す力が弱まりますので、その結果心不全という状態が起こりやすくなるのです。心不全になると体を動かしたときの息切れや動悸、足の浮腫みなどが出てきます。詳しくは心不全の症状の動画を参考にして下さい。

治療は大きく分けるとお薬による治療と、カテーテルアブレーション(血管内手術)があります。お薬は①脳梗塞を予防する血液をサラサラにする薬、②心不全を予防したり動悸や息切れの症状を良くする薬があります。カテーテルアブレーショ―ンが適している人は、一般に心房細動による動悸や息切れの症状があり、お薬を使っても症状が良くならない人、条件として不整脈発症から長期間経過していない人、心臓がそれほど大きくなってなく、心臓の動きが悪くなっていない人とされています。動画では図を使って分かりやすくお話ししてますので是非ご覧ください!

心房細動について知っておきたいこと

こんにちは。院長の品川弥人です。

前回の動画:絶対に放置してはいけない危険な胸痛の特徴【循環器内科医が5分で説明】
では危険な胸痛、狭心症の特徴について説明しましたが、今回はそれを補足する形で、急性心筋梗塞と狭心症との違いについての説明動画を作成しました。

1. 急性心筋梗塞とは何か?、2. 胸痛の性状、3. 胸痛の持続時間、4. 胸痛が起こるタイミング、5. 心筋梗塞の前兆、についてお話をしています。

【心筋梗塞とは?】
狭心症は心臓に血液を送る冠動脈が詰まりかけている、或いは血管の痙攣によって一時的に血管が細くなって血の巡りが悪くなっている状態です。
心筋梗塞とはそれがもっと進んだ状態。すわなち、冠動脈が完全に詰まってしまい、心臓の筋肉が壊死をしてしまうため心臓の動きが止まってしまう命に係わる状態です。

【胸痛の性状】
痛みの特徴は狭心症と急性心筋梗塞で大きな違いはありません。前胸部の広い範囲でおこる、締め付けられるような、重しを乗せられたような圧迫感であることが多いです。また、冷や汗をかく、左腕や顎、歯、背中にも痛みが広がることもあります。さらに、胸でなくみぞおち、胃のあたりだけが痛む場合もあるので注意が必要です。胃の痛みだと思ったら狭心症や心筋梗塞だったということも決して珍しくありません。そして心筋梗塞では痛みの強さが狭心症より強いのが一般的です。

【痛みの持続時間の違い】
狭心症の段階では、胸の痛みは一時的なのが特徴です。冠動脈が詰まりかけていることでおこる労作性狭心症では、体を動かしたときに胸の痛みがおこり、休むと良くなるのが特徴です。冠動脈が痙攣することで起こる冠攣縮性狭心症では安静時に胸痛が起こることが多いですが、どちらも持続時間は数分から長くても15分程度のことが多いです。一方で、急性心筋梗塞の場合は胸痛は30分以上続きます。

【胸痛が起こるタイミング】
労作性狭心症では体を動かしたとき、安静時狭心症では明け方に起こりやすいなどの特徴がありますが、急性心筋梗塞の場合はいつ起こってもおかしくありません。運動時、安静時、夜寝ているとき、いつ発症してもおかしくありません。

【心筋梗塞の前兆】
急性心筋梗塞の前兆はある場合とない場合があります。まず前兆がある場合ですが、体を動かしたときの胸の圧迫感があり、だんだん胸痛の程度が強くなる、持続時間が長くなる、ちょっと身の回りのことをしただけでも胸の痛みが出るようになる、などが危険な兆候です。一方で前兆が全くない、狭心症の痛みが全く起こったことがない人が突然心筋梗塞を起こすことも決して珍しくありません。ですので、突然今まで経験したことがないような胸の圧迫感、重苦しさ、締めつけられるような痛みが出現し、冷や汗を伴い改善がない場合は急性心筋梗塞の可能性があります。このような場合はすぐに救急車を呼ぶ必要があります。

しながわ内科・循環器クリニックロビーコンサート主宰の佐藤良輔です。

題名の引っ越しですが、実際に引っ越しをしたわけではありません(笑)皆様もご覧になっているかと思いますが、しながわ内科・循環器クリニックのYoutubeのチャンネルがありますが、先月オンラインコンサート用のチャンネルを作成してもらい、今までアップロードしたものを新しいチャンネルでも視聴できるように致しました。今後は音楽の動画配信については新しいチャンネルから発信してまいりますので、ご登録どうぞよろしくお願いいたします。

新しいチャンネルはこちらです。

https://www.youtube.com/channel/UCYrryb8mGr-Vy5ngWwEsmqQ/

こちらのブログで5回目の配信のお知らせをするのをすっかり忘れてしまっていたので、こちらもご案内させてください。

3.4回とピアノとの共演でしたが、今回の5回目でひとまずこのシリーズは終わりとなります。今回も2曲の配信です。

サンサーンスの白鳥

シューマンのトロイメライ

どちらも聞いたことのある名曲です。そちらを演奏しましたので是非ご覧くださいませ!そしてチャンネル登録もよろしくお願いします!

オンラインコンサート Vol.5

https://youtu.be/ymmISaooivk

今回は慢性心不全、心筋梗塞、心房細動、弁膜症、心筋症などの心臓病で通院されている患者さんの日常管理でとても大事な話をします。
心不全は急激に悪化する急性増悪という状態を繰り返しながら、徐々に悪化していきます。
大きく状態が悪化した後は、飲み薬の調整や入院加療で状態は改善しますが、心臓の力としては徐々に弱っていきますので、心不全を悪化させないことがとても大事なのです。


では具体的にどうすればよいのでしょうか?
まず心不全が悪化したときの症状をしっかり知っておくことです。それはうっ血の症状であり、次の5つが代表的な症状です。①体を動かしたときの息切れ、②浮腫み、③横になって寝ているときの呼吸困難、④体重増加、⑤安静時の呼吸困難
つまりこの5つの症状が起きないように注意をすればよいのです。


ではこのうっ血の症状が悪化する原因は何でしょうか?
多い原因を5つ挙げると、①塩分・水分の摂りすぎ、②感染症(かぜや肺炎をきっかけに悪化)、③過労、④薬の飲み忘れ、⑤不整脈となります。この中で圧倒的に多いのが塩分や水分の摂り過ぎです。塩分の理想的な量は1日6gです。塩分がしっかり制限できていれば、水分は厳密に制限する必要のないことがほとんどです。ただし重度の心不全の場合は水分もしっかり管理する必要があります。

どのくらいの制限が適切なのかは病状によって異なりますので主治医の先生に個別に相談する必要があります。また、過労を避ける、薬を飲み忘れないこともとても大事な点です。かぜを中心とした感染をきっかけに心不全が悪化することも多いです。熱や咳が長引くときは早めの病院受診が大事です。また、不整脈が増えると心不全が悪化しやすいことも覚えておきましょう。

さて、このうっ血症状の悪化を防ぐ、いち早く悪化に気付くためにとても大切なことがあります。それが自宅での血圧、脈拍、体重の定期測定と記録です。急に体重が増えてきたとき心不全増悪のサインであることが多いです。特に塩分や水分を取りすぎていると体重が急に増加します。血圧が高すぎると心不全は容易に悪化します。

また、脈拍を定期的に記録しているといつもより脈が速い、或いは遅い、血圧計で不整脈のマークが多くでるなどで、気づくことができます。血圧手帳を定期的に記録して、うっ血の原因となる五つの原因に気を付けて生活することで心不全の悪化を予防することができるのです。

悪化させない心不全管理

こんにちは。院長の品川弥人です。

心筋炎という病気を知っていますか?最近新型コロナウイルス感染症に合併する心臓障害として耳にする方も多いのではないでしょうか?
心筋炎とは心臓の筋肉に炎症を起こす病気です。軽症の場合は無症状であることも多いですが、重症になると心不全やショックを引き起こし命にかかわる重大な病気です。原因は様々ですが、その一つとしてウイルス感染症があります。のどの風邪やおなかの風邪症状の1~2週間後に、胸の痛み、動悸、息苦しさ、失神などで発症することが多いとされています。風邪が治った後にこのような胸の症状が出てきた場合は要注意ですので、必ず病院を受診するようにしましょう。

 最近、新型コロナウイルスによる心臓の障害、心筋炎の報告が相次いでいます。通常の風邪ウイルスと同じく心筋炎を引き起こす報告は以前からあったのですが、新型コロナウイルス感染症から回復した患者さん100例に心臓MRIの検査をしてみると78%に異常がみつかり、60%に持続している炎症所見と認めたと報告されています。(JAMA Cardiol. 2020 Jul 27:e203557. doi: 10.1001/jamacardio.2020.3557.)また心エコー検査では69カ国合計1216人の患者さんの約半数に何らかの異常を認めているという論文もあります(Eur Heart J Cardiovasc Imaging. 2020 Jun 18:jeaa178. doi: 10.1093/ehjci/jeaa178.)。検査で異常がみつかっても無症状の場合も多くありますので過剰に心配する必要はないと思われますが、少なくとも胸の痛み、動悸、息切れなどの症状が新たに出現した人は要注意ですので、しっかりと検査を受ける必要があると思われます。

急性心筋炎を疑う症状は?~早期発見のためにできること~

胸の痛み・動悸・息切れに関連する動画はこちら


こんにちは。院長の品川弥人です。

前回は心不全という病気について説明しました。心不全とは全身に血液を送るポンプのとしての心臓働きが悪くなり、浮腫みや息切れがおこる進行性の病気です。

今回は心不全の原因と予防についてお話します。心不全の原因は何でしょうか?

答えは、「心臓が悪くなる病気は全て心不全の原因となり得る」と言えます。

心不全の原因となる心臓の病気は大きく分けると心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、不整脈、心筋症、高血圧症などに分類できます。

さらにこのような心臓の病気をおこす原因は何か?まで突き詰めると、心筋梗塞や狭心症をはじめとした多くの心臓病の原因は、高血圧症、糖尿病、タバコなどの生活習慣病なのです。

もちろん生活習慣と無関係におこってしまう心臓の病気もありますが、多くは生活習慣病が大元の原因になっているのですね。

したがって自分でできる心不全の予防が何か?といえば食生活や運動習慣などの生活習慣の改善ということになるのです。

動画での説明も是非ご覧ください。

心不全の原因は?どうやって予防するか?

こんにちは。院長の品川弥人です。

心不全てどんな病気か知っていますか?
多くの人は耳にしたことがあると思いますが、一般的には、心臓発作? 突然心臓が止まってしまうこと? と思う方が多いのではないでしょうか。
心不全という病気を簡単に説明すると、心臓の血液を送り出すポンプとしての働きが悪くなる病気のことなんです。
一般の方向けの分かりやい説明としては、「心不全とは、心臓が悪いために、息切れや浮腫みが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。」と定義されています。(日本循環器学会・心不全学会)

つまり心不全とは、急激に心臓が悪くなる急性心不全という病気もあるのですが、徐々に心臓の働きが悪くなる慢性的な心臓病を意味することのほうが多いのです。

日本人の死因の中で一番多いのは悪性新生物(癌)で、2番目に多いのが循環器疾患(心臓病)(2020年7月現在)ですが、循環器疾患の中で心筋梗塞が減ってきている一方、毎年増え続けているのが心不全で、2020年現在、20年間で約2倍に増えています。(厚生労働省が毎年発表している人口動態統計より)しかし、癌に比べると“心不全”という病気の怖さについてはあまり知られていないのが現状です。
実は心不全で入院したことのある人はその後の5 年間に約半数(50%)の方が亡くなっています。これは肺がんよりは良好ですが、大腸がんとほぼ同等、前立腺がんや乳がんよりは不良なのです。
心不全患者さんが増加している現状は「心不全パンデミック」といわれ、その対策の必要性が社会問題にもなっています。これから数回にわたって心不全という病気について詳しく説明していきますね。

心不全とはどんな病気?